フード写真やイラスト、コラムなどコンテンツ制作をしながら、東京日本橋より感謝を込めて時々配信しております。

ソースとは?ソースの材料や語源、歴史を知って、ソース料理を食べよう!

イギリスでのウスターソースの誕生を出発点に、文明開化の波に乗って黒褐色の調味料「ソース」が日本に広まりました。お好み焼き、たこ焼き、焼きそば、とんかつなど、ソースはいろんな料理に欠かせない調味料として各地に根付き、独自の進化を続けています。でもソースとは一体何でしょう?ソース好きとして、ソース料理についてまとめてみました。ソースの語源や歴史、ソースの材料、日本のソース事情を知って、美味しいソース料理をいただきましょう!

ソースとは?ソースの語源とウスターソースの歴史

ソース【sauce】
(1)西洋料理の調味に用いる液体。料理の一部として作るほか、調味料として市販されているものもある。
(2)特に、ウスターソースのこと。

広辞苑

ソースの語源は?ソースはなぜ黒褐色なの?

ソースを使う料理といえば、お好み焼きやたこ焼き、ソース焼きそば、とんかつなどなど。ソースは、ソース料理の主役で、味の決め手です。
ソースの語源はラテン語の「SAL」英語の「SALT」で、給料を意味する「サラリー」や塩を意味する「サラリウム」やに由来し、「塩の供給」を意味するとされています。このことから、塩を含んだ液体調味料の総称が「SAUCE」です。醤油もポン酢も焼肉のタレも、ケチャップやマヨネーズやドレッシングもソースといえますが、日本では、お好み焼きやたこ焼き、焼きそばなどに使う、茶色や黒色のソースを「ソース」と呼びます。

また広辞苑によると、ソースとは「特に、ウスターソースのこと。」とあります。フランス料理では「料理の数だけソースがある」といわれるほどソースは多様で、オランディーズソースやベシャメルソース、オーロラソース、クーリなど、風味も色も様々です。ですが、日本でソースと呼ばれているソース類は、どうして黒褐色なのでしょう?

それは、農林水産省が「ウスターソース類の日本農林規格」として「茶色又は茶黒色をした液体調味料」と定義しているためなのです。市販のソースは「ウスターソース類のソース」なので、フランス料理のソースのようにカラフルにすることはできません。
また、日本農林規格の定義にある「ウスターソース類」とは一帯何だ?ということですが、これはソースの誕生に由来しています。

ウスターソースの誕生と沿革

一説によると、ソースが誕生したのは19世紀の初めのこと。イギリスのウスターシャ州のウスター市に住む主婦が、何に使おうとしたのか余った野菜や果物の切れ端を壺に入れ、スパイスや塩、酢を入れて保存していました。それを数カ月後に開けてみたら、溶け合って黒く熟成した調味液になっていて、これが美味しいと近所でも評判になり、地元で造って「ウスターソース」として販売したというもの。

また別の説では、1800年代の中ごろ、インド総督だったマーカス・サンデー卿が任務を終えてイングランドに帰国した後、現地のソースの調合法を持ち帰り、ウスター市のジョン・リーとウイリアム・ペリンスという化学者に試作を依頼して誕生したのが「ウスターソース」というものです。

ウスターソースは「日本の洋食」の味の決め手。

ウスターソースは文明開化で日本に広まった

日本にソースがやってきたのは明治維新の頃のこと。明治17年、ヤマサ醤油の七代目・八代目の浜口儀兵衛氏がソース造りにチャレンジし、新味醤油として『ミカドソース』を売り出すものの、先進的すぎて消費者に受け入れられず製造中止に。それでも洋風文化の波は止まらず、明治27年に関西で『三ツ矢ソース』、続いて『錨印ソース』『白玉ソース』が誕生します。関東では明治33年に『矢車ソース』、続いて『犬印ソース』、『MT大町ソース』、『スワンソース』が登場。中部では明治41年にカゴメソースなどが『ウスターソース』を製造・販売し、文明開化の波に乗って日本全国に「ウスターソース」が広まっていきました。

明治時代に続々と誕生した日本うまれのソース

  • 明治17年 『ミカドソース』(ヤマサ醤油・七代目八代目 浜口儀兵衛氏)
  • 明治27年 『三ツ矢ソース』(越後屋・布谷徳太郎氏)
  • 明治29年 『錨印ソース(現イカリソース)』(山城屋・木村幸次郎氏)
  • 明治32年 『白玉ソース』(野村用食料品製造所・野村専治氏)
  • 明治33年 『矢車ソース』(伊藤胡蝶園・長谷部氏)
  • 明治38年 『犬印ソース(現ブルドックソース)』(三澤屋商店・小島仲三郎氏)
  • 明治39年 『MT大町ソース』(大町信氏)
  • 明治41年 『ウスターソース』(愛知トマトソース製造・現カゴメ・蟹江一太郎氏)
  • 明治45年 『スワンソース(チキンソース)』(荒井長次郎氏)

今では『とんかつソース(濃厚ソース)』『中濃ソース』「お好み焼きソース』『たこ焼きソース』『焼きそばソース』など多様なソースがありますが、その元はすべて『ウスターソース』なので、これらのソースを総称したものが「ウスターソース類」なのです。

ソース焼きそば

ソースの原料って?ソースは何から作られる?

ソースの主な原料は、野菜と果物、香辛料、酢です。ウスターソース類の原料についても、農林水産省が「ウスターソース類の日本農林規格」として次のように定義しています。

  1. 野菜若しくは果実の搾汁、煮出汁、ピューレー又はこれらを濃縮したものに砂糖類(砂糖、糖みつ及び糖類をいう)、食酢、食塩及び香辛料を加えて調製したもの。
  2. (1)にでん粉、調味料等を加えて調製したもの。

原料の定義としては、かなりざっくりしている印象です。自由度が高そうなので、今後は従来のソースのイメージをガラッと変えるようなソースが登場するかも知れません。

ソースの原料は野菜と果物、甘くて酸っぱくてスパイシー

ソースは実にさまざまな野菜と果物、香辛料でできています。これに米酢や穀物酢などの食酢、糖類、食塩、でんぷん、醤油や魚介などのエキス、ワインなどを加えます。メーカーそれぞれが、商品独自の配合や組み合わせで個性を打ち出しています。
ソースには唐辛子やしょうが、シナモンなど漢方薬にも使われているスパイス・ハーブがたっぷり使われていて、香り高く、野菜や果物の旨味も豊か。しかもソースはノンオイルなのでカロリーも少なく、大さじ1杯のエネルギー量は約18kcalとマヨネーズの1/6ほど。塩分も控えめで、大さじ1杯の塩分は約1gと薄口醤油の約半分です。それでいて料理の味を手軽に決めてくれるソースは、とても優秀な調味料なのです。
ソースはケチャップと合わせるだけで味の決め手になり、ハンバーグにかかったデミグラスソースやハヤシライス、チキンライス、オムライス、ナポリタン、ミートソースなど、「日本の洋食」の味付けのベースにもなっています。

ソースの原料に使われているおもな野菜と果物、香辛料

野菜・果物トマト、玉ねぎ、ニンジン、にんにく、セロリ、りんご、プルーン、デーツ、タマリンドなど
香辛料唐辛子、しょうが、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、ローレル、セージ、タイム、クミン、クローブ、シナモン、フェンネル、キャラウエイ、フェヌグリークなど
中濃ソースはお好み焼きにもぴったり。

ウスターソース、中濃ソース、濃厚ソースの違い

ソースの種類は3タイプ

ウスターソース辛口:基本のソースでピリッとした辛味が強めのサラサラソース
中濃ソース甘辛口:ウスターソースと濃厚ソースの中間タイプ。煮込み料理や下味にも使われる。
濃厚ソース甘口:野菜や果物の繊維分が多く、ドロっとした濃厚ソース(とんかつソース、お好みソース、たこ焼きソース)

近年のソース市場はバラエティに富んでいて、焼きそばソースやお好み焼きソース、とんかつソースなどの専用ソース、塩分や糖質を意識したソースや有機野菜のソースなど、じつに細分化されたさまざまなソースが売場に並んでいて圧倒されるほど。ですが、ソースのタイプは主に3つです。基本のソースはピリッとしたスパイスの辛味が強めでサラサラな「ウスターソース」。果物が多めに入って甘口で繊維分が多く、ドロっとした「濃厚ソース」。ウスターソースと濃厚ソースの中間タイプの「中濃ソース」です。
とんかつソースや焼きそばソースは「濃厚ソース」の仲間ですが、通常の濃厚ソースをさらにどろっとさせて旨味を強くしたソースです。

とんかつソースのかかったトンカツの写真。とんかつソースは豚カツのために開発された絶妙なとろみのソースです。photo(C)kumitatetsushin
とんかつソースは豚カツのために開発された絶妙なとろみのソースです

中濃ソースは北海道や東北、関東で好まれ、北陸・中部・近畿・四国・九州はウスターソース、またはウスターソースと濃厚ソースとの併用が多く、中国エリアは濃厚ソースや酸味を抑えたお好みソースが好まれているようです。大阪の串カツ屋さんで「二度漬け禁止」の串カツソースは、主にウスターソースを水で薄めたものです。
山形のおやつ「どんどん焼き」の味付けは甘口と辛口があって、甘口とはおもに醤油味、辛口とは中濃ソース味を指します。

出典:ウスターソース類の日本農林規格:農林水産省 (maff.go.jp) 
   ソースについて|農畜産業振興機構 (alic.go.jp)

西日本はソース料理好き、広島はソースの消費量がダントツ

ソース料理といっても色々ありますが、「お好み焼き」と「焼きそば」はソース料理の筆頭格と言えるでしょう。明治後期から大正、昭和と、文明開化の流れと共に広まってきたソース文化ですが、戦後の食糧難のとき、米の代用だった小麦粉と比較的安価に手に入ったキャベツを使った手軽な料理としてお好み焼きの人気が拡大しました。
その後、それまでのウスターソースに加え、昭和30年代半ばごろからお好み焼きに合う甘口の濃厚ソースや中濃ソース、お好み焼きソースが開発され、屋台料理だったお好み焼きが家庭にも浸透し、各地で定着したと言われます。

お好み焼き大国、大阪と広島

『お好み焼き』といえば、個人的には大阪の混ぜ焼きタイプのお好み焼きで、広島の乗せ焼きタイプのお好み焼きは、独立した「別もの」の印象です。東京でも『お好み焼き』といえば大阪や関西のイメージで、広島のお好み焼きは『広島風お好み焼き』とか『広島焼き』とされていることが多いです。が、広島で「広島焼き下さい」といっても相手にしてくれません。広島の人からすれば「お好み焼きいうたら広島のに決まっとるじゃろ」となるどころか、口論の元や喧嘩の種になるほどです。

全国のお好み焼き店、焼きそば店、たこ焼き店を店舗数(事業所数)で見ると、数こそ大阪の方が多いですが、人口1,000人当りの事業所数は、全国平均が0.123に対し広島県は0.564と圧倒的な多さ。さすが、広島はお好み焼き大国です。以下、兵庫県(0.323)、大阪府(0.300)、徳島県(0.269)、高知県(0.257)、京都府(0.225)、愛媛県(0.213)、岡山県(0.211)、和歌山県(0.195)、奈良県(0.179)と続き、ベストテンは西日本が独占している状態です。

統計局ホームページ/統計トピックスNo.111/ランキングでみた産業別・地域別の経済活動-平成28年経済センサス‐活動調査結果から- – 本文 (stat.go.jp)

ソースの消費量も西高東低、全国で広島がナンバーワン

お好み焼き、焼きそば、たこ焼きに共通する、味の決め手の調味料は「ソース」です。都市別にソースの消費量をみても、一人当たりの年間消費量は広島市がナンバーワン。全国平均が1,450mlのところ広島市は2,263mlとダントツです。広島の人がネタで「広島人の血にはソースが流れよる」といいますが、広島はまさにお好み焼き大国でソース大国です。なお、上位には西日本の都市がズラリと並びます。


戦後、日本の食卓の洋食化が進むとともにソースの消費も広がってきましたが、お好み焼き、たこ焼き、焼きそばといった「コナモン」が好まれる西日本の食生活にソースの文化が根付いたといえそうです。

ソースの消費量ランキング

  1. 広島市(2,263ml)
  2. 京都市(2,033ml)
  3. 堺 市(2,027ml)
  4. 神戸市(2,026ml)
  5. 岡山市(1,986ml)
  6. 徳島市(1,906ml)
  7. 高松市(1,906ml)
  8. 奈良市(1,868ml)
  9. 大津市(1,804ml)
  10. 大阪市(1,776ml)
  11. 松山市(1,732ml)

ソースの支出ランキング

ソースの支出が多い広島市(詳細はそれぞれのエクセルデータを参照してください)

参考:統計局ホームページ/家計調査(二人以上の世帯)
品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2017年(平成29年)~2019年(令和元年)平均) (stat.go.jp)

関連ページ:関西風のお好み焼きと広島焼きの違い


東京日本橋の有名なソースといえば?

東京日本橋のソースと言えば、日本橋兜町にあるブルドックソースです。ブルドックソースはソース市場でシェア25%のトップメーカーで、とくに東日本では圧倒的に強く支持されています。同じく日本橋兜町にあるエスビー食品には「スパイスソース」というロングセラー商品があり、スパイス&ハーブ市場でトップシェアです。
「食」に関わる会社がたくさんある日本橋は「ソースの街」でもあるようです。ソース料理好きとしてソースを記事にまとめてみました。

関連記事お好み焼きのバリエーションいろいろ